「優しい人」をイメージすると、
どんなことが思い浮かぶでしょうか。
穏やか、にこやか、親切……。
わたしの父は、そういう感じの人でした。
従姉(いとこ)の葬儀の日、
父は学校を休ませてはくれませんでした。
なぜ、お別れをさせてくれないの?
学校の方が大切なの?
わたしたち、とても仲がよかったのに。
ずっと、父を責め続けていました。
大人になったある日、親戚が集まった席で、
従姉がとても悲しい亡くなり方をしたと
知りました。
仲がよかったわたし達。
父は知っていたから、
葬儀に連れてゆきたくなかったのでしょう。
きっと、わたしが辛い思いをするだろうから。
娘にどう思われようと、
最期まで本当のことを言わなかった父は、
とても強い優しさを、持っていたと思います。
野花たちは、優しい顔をしてわたしたちをなごませてくれる。風によそぎながらさわやかな香りを届けてくれる。激しい雨の夜をこえても、なにごともなかったかのように空に背をのばす。まるで内に秘めた強さを、知られないようにしているみたいに。
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本日の一杯 ☕
優しい人は、こころから優しさを人に向ける
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親切にされると、優しい人だな、と思います。
優しい人は、人に優しくするために、
自分に厳しさを向けることがあります。
優しい人は、自分が困難な状況でも、
より困難な人を助けてしまう。
父は入院している病院で、点滴をしたまま、
突然、走りだそうとしたことがあります。
車椅子の人を助けなくちゃ、と言って、
反射的にドアの方へ走ってゆこうと
するのです。
わたしがドアを開けるから、
と押しとどめました。
なんて、わたしは、注意力がないのだろう!
父にはかなわない、と思いました。
怒られると、厳しい人だな、
と思うこともあります。
人のためを思って、
怒ったり、厳しくしたりすることは、
優しさだと思っていました。
そういう行為は、
自分の怒りを正当化することもあるし、
控えめな自己主張に、
すりかわることもあります。
それは、わたし。
やっぱり、父にはかなわない。
人を愛するとき、
人に対しての厳しさは、
必要ないのだと思います。