今日も、アリは朝から働き続けていました。
夏の間に食料をたくわえなければ、冬に困ることは、わかっています。
ビスケットをかかえて、食料庫へもどる途中、
にぎやかな音楽が、風に乗って聞こえてきました。
近づいてみると、キリギリスが、ヴァイオリンを弾きながら、
歌っていました。
まわりに、たくさんの虫たちが集まって、コンサートの真っ最中。
なんとも楽しそうです。
アリは顔をしかめました。
(あんなことばかりして、わかってないな)
そこへ、なごみがやってきました。
「どうして、みんなと一緒に楽しまないの?」
なごみが聞くと、アリは答えました。
「遊んでなんかいられないよ。みんな、わかってないんだ」
なごみは、びっくりして、いいました。
「わかってないのは、アリさんの方よ。
キリギリスさんは、みんなに楽しんでほしいから、
ヴァイオリンも歌も、たくさん練習しているの」
続けて、いいました。
「みんなを楽しませる仕事も、あるのよ」
さらに、
「アリさんは、さみしくないの? くるしくないの?
ひとりぼっちで、いいの?」
なごみがそういうと、アリは考えこんで、しまいました。
しばらくした、ある日、コンサートを終えたキリギリスに、
アリがかけ寄って、どんぐりで作った水筒をさしだしました。
中には、つめたくておいしい湧き水が入っています。
秋風が立ち、もう少しすると、厳しい冬がやってきます。
今日も、アリは朝から働き続けました。
仕事を終えると、食料庫から、れんげの蜜をとりだしました。
(これで、レモネードを作ろう。チョウさんが喜ぶから)
カブトムシさんから、もらったカエデの蜜は、
パンケーキによさそうです。
料理をしていると、ちりん、と電話がなりました。
モグラさんからです。
「明日には、コンサートホールができあがるよ」
野原の風は、さわやかだけど、暖炉の火も、いいだろうね、
とアリは思いました。
今年の冬は、楽しくなりそうです。
おしまい☕