なごみカフェ 

~豊かなこころで、シンプルな暮らし~

なごみ劇場「アリとキリギリス」

f:id:nagomi_cafe:20200328161442j:plain

 

今日も、アリは朝から働き続けていました。

夏の間に食料をたくわえなければ、冬に困ることは、わかっています。

 

ビスケットをかかえて、食料庫へもどる途中、

にぎやかな音楽が、風に乗って聞こえてきました。

 

近づいてみると、キリギリスが、ヴァイオリンを弾きながら、

歌っていました。

 

まわりに、たくさんの虫たちが集まって、コンサートの真っ最中。

なんとも楽しそうです。

 

アリは顔をしかめました。

 

(あんなことばかりして、わかってないな)

 

f:id:nagomi_cafe:20200328161459j:plain

 

そこへ、なごみがやってきました。

 

「どうして、みんなと一緒に楽しまないの?」

 

なごみが聞くと、アリは答えました。

 

「遊んでなんかいられないよ。みんな、わかってないんだ」

 

なごみは、びっくりして、いいました。

 

「わかってないのは、アリさんの方よ。

 キリギリスさんは、みんなに楽しんでほしいから、

 ヴァイオリンも歌も、たくさん練習しているの」

 

続けて、いいました。

 

「みんなを楽しませる仕事も、あるのよ」

 

さらに、

 

「アリさんは、さみしくないの? くるしくないの? 

 ひとりぼっちで、いいの?」

 

なごみがそういうと、アリは考えこんで、しまいました。

 

 

 

しばらくした、ある日、コンサートを終えたキリギリスに、

アリがかけ寄って、どんぐりで作った水筒をさしだしました。

中には、つめたくておいしい湧き水が入っています。

 

f:id:nagomi_cafe:20200328164539j:plain

 

秋風が立ち、もう少しすると、厳しい冬がやってきます。

 

 

今日も、アリは朝から働き続けました。

 

仕事を終えると、食料庫から、れんげの蜜をとりだしました。

 

(これで、レモネードを作ろう。チョウさんが喜ぶから)

 

カブトムシさんから、もらったカエデの蜜は、

パンケーキによさそうです。

 

料理をしていると、ちりん、と電話がなりました。

モグラさんからです。

 

「明日には、コンサートホールができあがるよ」

 

野原の風は、さわやかだけど、暖炉の火も、いいだろうね、

とアリは思いました。

 

今年の冬は、楽しくなりそうです。

 

 

おしまい☕