なごみカフェ 

~豊かなこころで、シンプルな暮らし~

思いがけず生き物を保護した話

 

ある夜、家に入ろうとしたとき、

足元にその生き物がいました。

冷たい雨でびしょ濡れ。

まんまるい可愛い目で、

わたしを見つめていました。

 

人間が触ったら、

仲間のところに戻れないかもしれない。

でも、このままにしておいたら朝には……。

少しだけ迷いましたが、

家に入れることにしました。

 

それは、すずめの雛でした。

 

体を拭いてあたためたけれど、

何を餌にしたらいいのかわかりません。

 

鉛筆削りで割り箸を削って、くちばし風に。

それでも、口を開いてくれず、

水を飲ませることもできません。

途方にくれました。

 

何も口にしないけれど、

わたしの手のひらに乗りたがり、

しばらくすると、眠ってしまいました。

 

用意した箱に布を入れ、

子すずめをそっと入れたとたんに、

目がパチリと開き、

あわてて手のひらに戻ってきました。

もしや、一晩中この状態?

焦りました。

 

数回、同じことを繰り返したのち、

やっと静かに眠りにつきました。

フタをかぶせ、一安心。

 

野生の生き物でも、

気持ちが通うことがあるのかもしれない。

そう思って、わたしも眠りにつきました。

 

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言葉が通じなくても思いが届く。正確に思いが交換される。言葉が邪魔になることもあるよね。思いを正確に表現する言葉を、持ち合わせていないんだもの。

 

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 本日の一杯 

 こころからの思いは通じる

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明け方、大音量のすずめの鳴き声で

目が覚めました。

 

外に親らしきすずめがやってきて、

会話をしているようです。

 

わたしは、急いでベランダに出て、

箱のフタを開けました。

 

すると、勢いよく飛んで……いかない。

 

なぜ?

 

子すずめは、箱の中からわたしを見て、

じっとしています。

いっていいのよ、と、箱をトントンたたくと、

箱の縁にぴょんと、とまりました。

 

それでも、親とわたしを交互に見て、

迷っているようでした。

 

ほら、いきなさい、

あなたとは一緒に暮らせないのだから。

 

やっと、飛び立っていきました。

 

その姿をみて、

ああ、真っすぐに飛べないんだ、

羽の調子が悪いんだ、と、きづきました。

 

昨晩の大雨で、

巣に戻れなくなってしまったのね。

 

 

しばらくしたある日、

わたしが自転車に乗っていると、

二羽のすずめがほんの一瞬、

前かごにとまりました。

 

正確にいうと、

一羽はとまろうとして、滑り落ち、

わたしは避けようとして、

コケそうになりました。

 

二羽、連なって飛んでいく姿は、

あの親子だと一目でわかりました。

 

すずめを見ても区別はつきません。

でも、あの飛び方! まちがいない!

 

元気でね、カラスに狙われないように。

 

覚えていてくれたのか、

わからないけれど、

ずっとたった今でも、

思い出すと胸が熱くなります。