なごみカフェ 

~豊かなこころで、シンプルな暮らし~

おいしいお茶を淹れる人

 

職場にお茶を淹れるのが

上手な人がいました。

 

緑茶、紅茶、コーヒー……。

どれもが格段においしいのです。

 

 

「茶葉とか豆とか、違うものを

 使っているのですか?」

 

そう聞いたら、

 

「給茶機コーナーにある会社のものよ。」

 

 

えっ!

 

弟子入りするしかありません。

 

 

ひととおり、手順を見た後、

首を傾げました。

 

どれも、特別なことをしておらず、

お湯や茶葉、豆などの量も、

加減することもなく、指示通りです。

 

カップを温める、湯の温度を調整する、

ということもしません。

 

みんながしていることと、

変わりがないのです。

 

 

「どうしてどうして、こんなに違うの?

 同じものを使って同じようにしているのに、

 ぜんぜん違う味!」

 

わたしは途方にくれました。

もはや才能だと、

あきらめるしかありません。

 

そうしたら、その人がこう言いました。

 

「うーん、そうね。

 お茶を淹れるときは、

 おいしくな~れ、ってこころで思ってる。

 おいしいのを飲みたいし、

 飲んでほしいから。」

 

 

……。

 

 

スタートから違っていました。

 

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わたしが「好きなお茶」は【おいしいお茶】です。お茶する、という言葉には広い意味がありますよね。一息つくとか。お店でも自宅でも、おいしいものを口にしたい。おいしさは、気持ちだったり雰囲気だったり、いろいろなもので作られます。だれかのために自分のために、こころをこめる。それが丁寧な暮らしの一歩ではないかと思います。

 

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 本日の一杯

 こころをこめる

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わたしは長いこと茶道を続けていたので、

同じ抹茶を使っても、

味は点(た)てる人によって

違うと知っていました。

 

それは、茶の量や湯の温度、

点て方にあるのではないかと

思っていたのです。

 

ある日、茶道のお茶会に参加しました。

経験のない人も、

気軽に薄茶を楽しむことができる、

カジュアルな会です。

 

お茶室に入ると、

亭主(お茶を点てる人)が

ピリピリしていました。

 

まわりの人に小言をいいながら

お点前(てまえ)が進みます。

 

そのうち、参加者にも

お菓子の食べ方やお茶の飲み方が

違うと怒りだしました。

 

 

落ち着かないな。

 

 

しばらくすると、わたしのところにも

薄茶が運ばれてきました。

茶碗の中には、

きれいな薄緑のきめ細かい泡。

 

クリーミー

 

点て方が上手なのだと伺えます。

お茶会には八人程参加していたので、

水屋(バックヤード)で

亭主とは別の人が点てたものです。

 

 

うん。おいしい。

ふんわりまろやかで甘みを感じます。

 

けど……。

 

 

すごくすごく、哀しい味がする!

飲むほどに哀しさが増すのです。

 

三、四口ほどで飲み干せる薄茶が、

こんなに哀しみを湛えているなんて。

 

哀しい気持ちでお茶室をでました。

 

 

経験が足りなくて、

上手く点てられないことはあります。

 

そのときに飲んだ薄茶は、

上手な人が点てたからこそ、

感情が入ってしまったのではないかしら。

 

 

おいしさを届けるには、

自分のこころが健やかであることも必要かな。

 

「こころをこめる」ことの大切さを

知った日でした。

 

 

 

今週のお題「好きなお茶」