なごみカフェ 

~豊かなこころで、シンプルな暮らし~

こころに残る洋菓子店

 

子供の頃は、家の近くに

小さな洋菓子店がいくつもありました。

 

お祝い事があると、家族で店を訪れ、

ショーケースをのぞいては

こころを躍らせたものです。

 

大人になって、

珍しいスイーツが次々と登場し、

簡単に手に入るようになりました。

 

それでも、もう一度、と思うのは、

そのころの洋菓子なのです。

 

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子供の頃は、店名についている「ガトー」の意味がわかりませんでした。固そうなイメージがあったのでヘンだな~と思っていました。フランス語の gâteau(洋菓子、ケーキ)だと知ったのはずっと後のことです。 思うと、その店のケーキはどれも繊細でした。ショートケーキは、薄くスライスされたスポンジに薄く生クリームが塗られ、これまた薄くスライスした苺がサンドされ、層になっていました。バランスがよくそれぞれの素材の味を楽しむことができました。デパートや専門店のケーキが一個500円位だったころ、180円という価格。 果物やカスタードには紅茶がいいねとか、チョコレートにはコーヒーが合うとか、家族で飲み物を変えながら楽しんでいたことを思い出しました。 そうそう、近所だし箱がもったいないかな、と入れ物を持って買いに行ったら、「それだと傾いちゃうんじゃないかな。大丈夫かな。」と店主がとても心配そうに言っていたっけ。箱は、愛情を込めて作った大切なケーキたちを守るものであり、開けるときのワクワク感を楽しむものでもあるようです。

 

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 本日の一杯

 しあわせは、もう手にしているのかも

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店主がガラガラとシャッターを上げると、

いきなりショーケースが現れます。

アルミ盆の上にケーキが並んでいるのが

見えます。

 

コンクリートの床にショーケースを

置いただけの飾り気のない店。

奥では真っ白でパリッとしたコックコートと

エプロン、タイを身に着けコック帽を

被った店主と、奥様がお菓子を作っています。

 

まるで、絵本から出てきたみたい!

 

流行が変わり、少しずつ、

街中の洋菓子店が減ってゆく中、

その店はずっとずっとありました。

 

 

近くに住む友人と、話したものです。

 

「デパートや専門店のケーキは華やかだけど

 一度食べたら当分はいいかな。

 結局、いつもここに戻ってきちゃうのよね。

 食べ慣れているからなのかしら。」

 

 

しばらく、みないうちに、

店主しかみかけなくなりました。

 

店は古くなり日よけテントはくすみ、

店主はシャッターのシャフト(中心の棒)を

外せないくらい高齢に。

 

それでも、

相変わらず真っ白でパリッとした服に

身をつつみ、

素早くケーキを箱に入れると、

会計は瞬時に暗算。

包装紙を被せ、リボンを結ぶのは超高速です。

 

 

ずっと、ふつうのケーキだと思っていたの。

 

わたしにとっては、特別だったと気づいても

後の祭り。

 

 

クリームはふんわりやさしく、

スポンジはそれだけ食べてもおいしい。

スライスしたいちごは手作業とは

思えないほど整っているし、

飾りのナッツはケーキの上品さを

際立たせています。

 

なにより、全体的な仕上がりが、

どれも完成されていて、なるほど、

と思うのです。

 

あんずジャムを薄く塗った

ベイクドチーズケーキは100円。

だんだん値上げして150円位になりましたが、

質が変わることは一度もありませんでした。

 

どのお菓子も、

変わらずに美味しくあり続けました。

 

 

時代に合わせて

変わってゆかなければならないことも

あると思います。

 

それでも、

店主がご自分のレシピを誇りとされたこと、

それを貫いたこと、わたしは忘れません。

 

 

店主が作った、愛情たっぷりのケーキを

また、食べたいと、今でも思っています。

 

 

今週のお題「復活してほしいもの」